AFV冬の時代の限定キット
てなわけで予約してなかった再販M4A3E2ジャンボを近所のヨドまでひとっ走り買ってきました。
高荷先生の迫力ある箱絵が魅力のこのキットですが、発売は1987年とまさに「AFV冬の時代」なのですね。タミヤの「背景付き箱絵」の戦車キットといえば当時は「リモコンモーターライズ」キットだった訳ですが、MMシリーズでの背景付きボックスアートとなった本キット、確か「限定版」という扱いでの発売だったと記憶します。そして「AFV冬の時代」ということもあってか、新規パーツを極力抑えた内容で、新設計の砲塔と車体の増加装甲以外は1981年に発売になったM4A3(75mm)後期型(ITEM 35122)と共通になっています。履帯もM4A3と共通のダックビル付きですが、M4A3E2に見られるT48履帯と幅広タイプのダックビルタイプではないので、ちょっと残念な仕様です。あと、このタミヤのダックビル付き履帯ですが、これ以前の旧版のM10/36やM3リー、スチュアートなどのWW2米軍戦車キットでの再現とは異なり、初めてエンドコネクターの位置が正確になった記念すべきものなのですが、そのまま車体に装着するとダックビル部が少し反ってしまってイマイチ印象が良くないのも残念な点です…。また、新規開発のM4A3E2用砲塔の印象が実車と比べてイマイチ似ていないこともあり、発売当時のマニアの評判も決して高いものではなかったと思います。車体や砲塔をゴッソリ差し替えるレジンキットとかも出ていましたね…。自分も本キットは発売当時に期待して購入したのですが、あーだこーだ御託を並べたあげくにちゃんと作ることもなく処分してしまったように思います。とまあそんな感じのちょっと残念な本キットの思い出だったりします。
そして時は流れて2023年の今では、アスカモデル(旧タスカモデリズモ)やMENGからM4A3E2ジャンボの素晴らしい出来のキットが発売になっています。なので、より正確な模型が欲しいのであればそちらを作ればいいわけで、ここでは当時やりたくても出来なかったことや、今ならできるお手軽工作で、久しぶりにこのタミヤのM4A3E2を楽しんでみたいと思います。
工作の実際
工作にあたって参考にしたのは、シャーマンといえばのこのサイト。M4A3E2についてもバッチリです。とはいえ正確な模型が欲しければ、アスカやMENGを作ればいいので、基本はタミヤキットを活かして最小限の工作でカッチョいい「ジャンボ」を目指します。それと、最近はフィギュア造形でデジタルでの3Dモデリングに移行していることもあり、できれば追加工作等は3Dでモデリングしたパーツを使いたいと思います、具体的には「ペリスコープガード」と「フロントの増厚されたデフカバー」ですね。
履帯だけはどうしようもないので、こんなこともあろうかとアスカモデルネットショップでダックビル付きのT48履帯を注文してあったので、迷わずコレを使います。
パーツも少ないんでババっと組んで様子を見ますが、「顔」が全然似ていないのでまず主砲基部を1.2mmくらい上にして防盾位置を上げます。これだけで印象がらり変わって76mm砲塔と共通の「シャーマンの顔」になった気がします。
あと砲塔の「おでこ」が出っ張り過ぎなので黒マジックのラインまで削り込むために、まずはエポパテで裏打ちします。
主砲基部に出来た段差はエポキシパテで均します。車体裏側が筒抜けなのも気になるのでフタをします。車体上部は捻じれ防止のためにプラ材の梁を接着しています。
砲塔の「おでこ」を削りました。エポパテで裏打ちしましたが穴は開きませんでした。防盾位置上げとおでこ削りで印象がガラリ変わって、本キットの「なんだか顔が似ていない」感じが払拭できたように思います。
シャーマンのペリスコープガードのようなものをZBrushでなんちゃって試作して3Dプリンタで出力してみました。SATURN2にSK10K水洗いレジンで問題なく出たんですが、サイズ目分量でテキトーだったんで1発目は小さすぎでした。それと出してみると太さ0.2mmくらいで繊細すぎました。これらの点を修正して再出力です…(^^;
形状は実車写真を参考にしていますが細かい形状やサイズはキットとの現物合わせで適当です。参考に市販のパーツ(エッチング、インジェクション、3Dプリント)を色々見ましたが、各社各様でした。まあ拘り過ぎてもそもそもキットのペリスコープ基部の形がどこまで正確かという問題もあり…(^^;
次に車体前面のデフカバーですが、キットはM4A3用のシャープノーズのデフカバーのままでジャンボ用に装甲増加したタイプを再現していません。そのため前方から見た時の印象がこれまた実車と異なる部分です。なので増厚デフカバーは自作したいと思います。
まず3DスキャナのREVOPOINT MINIでキットパーツをスキャンします。スキャンにあたって、牽引フック基部が陰になってうまくスキャンできなかったので削り落としています。
スキャナソフト側でメッシュデータまで作成し、ZBrushにインポートして加工します。幅はそのままで実車写真を参考にして様子を見ながらボリュームアップしています。折角なので表面に鋳造肌風のテクスチャも付けちゃいましょう。
上部の取り付けボルト部分はM4A3通常型とは厚さだけでなくボルト穴部分の形状等が違いますのでZmodelerでモデリングして合成します。牽引フック基部と足掛けもZmodelerで作ります。
出力1回目。SK10K水洗いレジンは高価なので、安売りで買ったELEGOO水洗いレジンで出しています。安売りの売れ残りだったのでミントグリーンです…。出力結果としては寸法的には概ね良い感じですが、上部が歪んでしまいました。
こういうオーバーハングのパーツは歪みやすいらしく、上下に柱を立てても歪みます。斜め配置して出力すると片方が歪みます。レジンを変えればいいのかもしれませんが、この程度の単純なパーツは安いレジンでもそれなりに出せないと困りますので、対策を考える必要がありそうです。
最終的にパーツの周囲に「ベロ」を設けて、二次硬化後に切り取ることで歪みを抑制しました。
ということで、とりあえず今回やりたかったテーマ(デジタルで増厚されたデフカバーとペリスコープガードを作る)はクリアできたんじゃないかなと思います♪
あとサスペンションはニッパーでバチバチ切り取って、角度を変えて再接着して車高が下がった様子を再現します。車高が下がったので履帯は1コマ詰めています。
組み立て完了
てなわけでタミヤ1/35 M4A3E2「ジャンボ」、サフ吹いて組み立て完了です。履帯だけアスカの別売に替え、昔から気になってた砲塔前部をチョイいじってデフカバーを3Dで自作のお手軽?改造。昔のリベンジが出来たかなと思います。アスカやMENGの良キットが存在する現在ですが、このタミヤの「ジャンボ」も、ほんのひと手間かけるだけで十分カッコよくなったんじゃないでしょうか。
砲塔表面の鋳造肌や車体側面の溶接跡を溶きパテで再現したり、車体後部に荷物を載せたりしてますが、手すり等は地味に面倒なのでキットの板状のまま済ませています。エンジンルーバーの開きすぎ防止板は単純な形なので付けるつもりでしたが忘れてますね。フィギュアはタミヤのWW2米軍戦車兵セットから、立ちポーズのおじさんをチョイスしヘッドをドライバー半身像のものに交換してみました。
塗装はまたいずれ別の機会にw
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